インタビュー

素顔 VOL.03

普段、ホストとして振る舞う顔の内に秘めた思いの丈や、知られざる経歴などを本音ベースで語ってもらう「素顔」。イチ個人として、ありのままの姿を見せてくれた

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五月五月

ホストとして歩み続けるゴールなき道

僕は出身が秋田ということもあり、中学までスキージャンプとクロスカントリーの複合をやっていました。その時に夏の練習として陸上をやっていたんですが、たまたま長距離で全国中学校体育大会に出場して、県内の高校からスキーに加えて陸上の推薦もきたんです(笑)。

その時は陸上がすごく楽しかったので、陸上の強豪校を選びました。当初は長距離で駅伝をやろうとして高校に入学したのですが、しばらくして競歩を見たときに「すごくカッコいいな」と感じて競歩を始めたんですよ。

高校は3年間競歩を続け、インターハイと国体でも結果を残すことができ、大学と実業団から推薦をいただきました。しかし高校の先生から「実業団はまだ早い」と言われたので、上京して大学に行きました。大学では50キロ競歩をやっていて、オリンピックのB標準までいきました。

基本的にA標準の上位3人がオリンピックに出られるんですが、A標準の選手が少なかった場合は、B標準を達成している選手が選ばれるんです。当時はリオオリンピックの時代で、次の大会で結果を残せれば、僕もワンチャン出場できたんですよ(笑)。

でも大会直前の合宿練習で背骨を折ってしまい、オリンピックの夢は崩れてしまいました。医者から「半年間は一切競歩をできない」と言われ、ショックで自殺も考えたくらいです。療養とリハビリに1年を費やし、大学3年の最後の時期になんとか復帰できたのですが、1年間のブランクは思った以上に大きくて、何もできず大会すら出られませんでした。あの時が1番辛かったです。

大学4年生はもう就活しようと思っていたのですが、授業で教員免許を取得していたこともあり、先生を志して採用試験を受けました。しかし倍率が70倍と高すぎて、落ちてしまったんです。もともと落ちたときのために銀行を受けていたんですが、普通の銀行員だと親に許してもらえないので、本社採用で受かるように必死で勉強しました。

自分で言うのもなんですが、僕はクソ坊ちゃんなんです(笑)。誕生日プレゼントとしてもらったものと言えば、バスケットコートやキャッチボール専用の施設だったりと、ちょっと普通ではないですよね(笑)。ただ毎日の生活はかなり厳しかったですよ。

ウチは代々医者&先生の家系で、小さい頃から英才教育を叩き込まれてきました。小学生の頃は朝6時に起きて学校に行くまでの時間は勉強し、学校が終わってからは礼儀作法の勉強や塾などに通ってました。

毎日送り迎えでしたから、学校終わりに友達と遊ぶなんてことは一切なかったですね。もちろん当時周りで流行っていたゲームなどの娯楽はほとんど未経験で、例えばプレステを初めて触ったのは大学生の頃ですから(笑)。

家ではもっぱら勉強か読書で、観れるテレビ番組は夕飯時についてる「おじゃる丸」や「忍たま乱太郎」、そして相撲と野球が主でした。ただ、深夜に家族が寝たあとこっそり「匿名係長」や「夜王」といったドラマを観ていて、その頃からホストという職業に密かに憧れを抱いていたんです。

就活時に必死で勉強した甲斐もあり、銀行の本社採用に受かることができたんですが、どこか満たされない気持ちがあって、2年ほど続けた後に退職しました。銀行を辞めて「何をしようか」と考えていたとき、IONさんに声をかけていただき、以前から憧れていたホストを思いきって始めたんです。

幼少期の反動から、ホストになった今は逆に楽しすぎます。毎日がこんなに幸せでいいのかと思うぐらいに(笑)。銀行を辞めてホストになったことは親に隠していたんですけど、今年の1月、No.1を獲ったときに電話して、今までの経緯や諸々の事情を全て説明したんです。

親へ感謝の気持ちとして、仕送りもしました。しかし親からは「親と子の関係をお金で量るような子に育てた覚えはない」と言われ、振り込んだお金を返されてしまったんですけどね。でも親に全てを話すことができて、とてもスッキリしました。

僕は今までがドリーマー気質だったので、自分の中でも「ホストとしてここで満足してはダメだ」と無意識に感じている節があるかもしれません。

歌舞伎町で1番有名になることが目標なのですが、そのためには売り上げだけが全てではないと思っていて、アピールの仕方を日々考えています。またホストの世界においてビジネス面の仲良しこよしは必要ないと思っていますが、外では欠かせないと感じていて、従業員とBBQに行くなどのイベントはすごく楽しいです(笑)。

ホストという職業は、自身が商品となって需要に応える存在であると思っています。僕はお客さんにとって価値のある人間になりたくて、需要に対して自分はどういった形で応えるべきか考えたとき、内面はもちろん美容や清潔感などにも気を使い、ホストとして常にキラキラ輝いて見える存在でなくてはならないと考えています。

ホストは辛いこともあるけど、毎日が充実しているので続けられています。そして自分に価値を見出してくれる女の子がいることが、とても嬉しくて幸せを噛み締めています。

プライドがないのかと思われるかもしれませんが、いろんな意味で「ホストとして譲れないもの」はないですね。この世界では、絶対的な1位ってないじゃないですか。

譲れないものとか固定概念を持っている時点で、本当の1位にはなれないんじゃないかなと思っています。陸上の世界も同じで、毎年記録が更新されていて、極端に言うと50kmを0秒で歩かないと本当の1位とは呼べないじゃないですか。

けど僕はいつか本当に限界を超えたいと思いながら練習をしていたので、今まで育ってきた環境がゴールのないホストの世界と合っているのかもしれませんね(笑)。