ハンドボールの元女子日本代表という肩書を持つ現役ホスト「元女、いまホスト」

昨年、ルーセントに入店し、着実に人気を獲得する成宮 涼くん。実は昨年まで戸籍上は「女」であり、さらに水球の元日本代表というハイスペックな経歴を持っていた。男の戦場であるホスト業界に身を投じ戦う理由、そしてこれまでの人生とこれからを今回はゆっくり語ってもらった

常に一緒に遊んでいたのは男の子
女の子との会話についていけず

物心ついた頃から普通に女の子が好きで、幼稚園の頃は可愛い先生に近づきたいって思っていたぐらいです。同じクラスの女の子が◯◯君カッコイイとか言っている事に理解できませんでした。僕には兄姉がいるんですが、姉のおさがりを着るのが本当に嫌で親を困らせていましたね。祖父母から赤いランドセルをプレゼントされた時も黒が良かっただけに、その時はかなり苦笑いしていたと思います。

小学校に上がってもいつも遊んでいるのは男の子で、ただ自分だけ赤いランドセルが無性に嫌で、小4の時に身体が大きくてランドセルが背負いにくいという理由でショルダーバックに変えたぐらいです。水泳をやっていたこともあり、女の子にしてはかなり身体が大きい方でしたから。ある日ドッジボールをしていたんですね。

歌舞伎町 ホストクラブ ルーセント 成宮涼

幼稚園から小学まで。七五三の着物が子供ながらに苦痛に

自分で言うのもなんですが、めちゃくちゃドッジボールが上手くて、学校ではちょっとしたヒーローだったんですが、いつものようにボールを受けた時に、胸に激痛が走ったんです。親に相談したら「そろそろブラをつけないと」と言われ、一緒に下着屋に行ったんですけど、ものすごく恥ずかしくて。

ブラジャーは当然ながら嫌で嫌で仕方なかったんですけど、すでにBカップあったので周りの大人がつけなさいと。当時は意味がわかりませんでした。

イジメと周りとの温度差
そして水球との出会い

中学に上がるとまたもや障害が。そもそも制服のスカートが気持ち悪いし、異性を意識し始める時期だから、小学校の時のように男の子と遊ぶ事がなくなってきました。かといって女の子の話題についていけないし、そもそも興味がなく苦痛でしかなかったんです。それでも学校生活をどうにかしようと、部活に打ち込むことにしました。

ハンドボール部には僕を入れて1年の女子は5人。小学からやっていたスイミングスクールが結構なスパルタだったので、部活の厳しさなんて全然甘く感じてしまってたんですけど、それまでスポーツをやっていなかった彼女たちとっては辛かったみたいなんですよね。

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中高でも髪は常に短め。この頃は自分はバイセクシャルであると。初恋人が出来たのも同時期

でも勝ちたいと言うので、結構キツく僕も言っちゃってて「勝ちたいんだったらなんでもっと練習しないの?」とか。さらに僕が早い段階からレギュラーになっていたので彼女たちからしたら余計にウザかったんでしょうね。そのうち4人と僕の間には大きな溝が出来て、口も聞かなくなってきました。中2の終わり頃に部活を辞めるんですが、同じ時期にクラスでイジメを受けるように。

授業を真面目に受けずに、他の人に迷惑をかけるギャルグループのボス猫を注意した時からそれが始まりました。しばらくの間、暴言のオンパレード。ただ中3になればクラス変更があるから我慢してたんですね。それに成績も良くて、授業も真面目に受けていたから先生方が味方になってくれて、特に担任は家にまで来て親にちゃんと説明までしてくれました。

休み時間も常に先生がボス猫のそばにいるようになって、そのうち観念して謝ってきました。中3のクラスは先生が配慮してくれて、仲の良い友達で固めてくれました。そして同じ頃に水球をやっている友人に誘いを受けて、そちらの道に進むことにしたんです。思えばそこが分岐点になったんですよね。

ブログでバレたプライベート
初めてのカミングアウト

高校は水球の強い女子校に進学。その頃、自分はバイセクシャルだと思っていて、僕と同じような子がいるのではないかと思っていたんですが、そんな噂もなくがっかりしたのを覚えています。

みんなとずいぶん仲良くなってきた頃、自分だけ浮いた話がないことに友達が心配して男を紹介してきてくれて、仕方なくデートをしてみたんですけど、気持ち悪すぎてダメでしたね。もう女扱いされるのが嫌なんだというはっきりとした自覚が生まれたのもその頃です。

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高2でインターハイ優勝を果たし、全国にその名を知らしめる。パワーならダントツ

高2の頃に初めての彼女ができてものすごく楽しい毎日になりました。本当は友達に惚気たいけど出来ないから、ブログでなら大丈夫だろうと名前も変に変えず写真も載せてアップしたら、すぐにバレて1人の友達が「後で話があるんだけど」と。

もう学校生活が終わったと思いました。1年生の頃に「レズビアン」疑惑でイジメを受けてたので余計に。もう隠しようがないので、覚悟を決めて子どもの頃からずっとこうで、いま女性と男として付き合っていることまで、号泣しながら全てを打ち明けました。すると友達は泣きながら「これまでと何も変わらないよ」って言ってくれたことが本当に嬉しかったですね。

それまで家族にも友達にも誰にも話せなかったことを初めて人に話すことで、何か自分の中でのモヤが晴れたように感じました。

インターハイ優勝と
日本代表への選出

水球の方はポジションはキーパーだったんですが、今でも覚えてるんですけど、高2の練習の時に今までにない疲労感に襲われてその日は何をやってもダメだったんですが、翌日からもの凄く上手くなっていたんです。ボールがどこに来るかがハッキリわかるようになるというか…。先生からも「どうしたんだお前?」と言われるほど1日で急激に伸びていたんです。

インターハイで優勝し、3年生に上がってからはキーパーからフィールドプレイヤーに転向。テクニックはないものの力ではダントツで強かったので、そこそこ活躍はできたかな。友達にカミングアウトしてから何もかもが上手くいき、そのまま推薦で女子大に入学。2年生の時に日本代表に選出されるまでになりました。

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親孝行だと思って着た振袖。初日本代表に選出されたのもこの頃

20歳の決断
母へのカミングアウト

節目となる20歳になったら母親へカミングアウトをすることを決めていました。やはり1番近くにいる母には理解して欲しいという思いがずっとあったんです。当時、付き合っている女性がいて、母親もその子のことは知っていました。ある日、母親に「実は〇〇ちゃんと付き合ってるんだよね」と打ち明けました。

「どういうこと?付き合う?」と当然の反応が返ってきて、実は小さい頃から違和感しかなく、スカートを穿くのが嫌だった、七五三が苦痛だった、高2の頃に初めて彼女が出来た…など細かく全てを話しました。すると母は「それだけ?」と。それだけだと伝えると「お母さん眠いから寝るね」と寝室へ行ってしまいました。

怒られるか、わかったのどちらかだと思っていたので、僕としても拍子抜けしてしまいましたが、おそらくショックを受けていたんだと思います。でも、もう慣れさせるしかないと思って、その後は大学卒業まで母親に逐一報告をするようにしたんです。

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新たな決意
そして男として

大学4年になり、日本代表の選考会で落選し、最初は東京オリンピックまでは頑張ろうと思ったんですが、その先のことを考えると未来が見えなかったんです。それに治療したい想いもあったので水球から身を引くことを決意しました。自分でもハッキリさせたかったし、人にきちんと説明できる証明できるものが欲しかったので、まずは病院へ診断書をもらいに行きました。診断の結果は【性同一性障がい】。

家族にも報告し、そこからは応援してもらえるようになりました。治療も本格的に始めて、2016年には胸をとる手術を行いました。Eカップあったので全部で3回かかってしまいましたけどね(笑)。そして、昨年に子宮と卵巣をとる手術も行い、5月の令和と共に戸籍も男になりました。

男社会のホスト業界へ
自分の武器は唯一無二

それまで下北沢のMIXBARで働いていたんですが、メンタル的にこの場所で働くのは少し違うのかな?と思い始め、そのうち男としてどこまで通用するのかを挑戦したくなってきたんです。で、男ならではの職業で思いついたのがホストだったんですよね。昨年の10月末からルーセントでお世話になり、翌11月から掛け持ちでBARでも働いています。

やはり男同士の世界は思った以上に刺激的だし面白いですね。いまはお店の看板に乗って、そこに「元女だけどNo.1!!男どうした?」って煽り文句を書いてもらうのが目標です。それに女性としてこれまで生きてきたことは僕にとって大きな武器で、僕ほど女性の気持ちをわかるホストっていないんじゃないですかね(笑)。だからこそ、僕にしかない接し方をこれからもっと突き詰めていきたいですね。

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性同一障がいはハンデではない!
理解のある社会を作りたい

少なからず僕と同じような境遇の方はいると思うのですが、まだまだ世間には理解されにくいのが現状です。僕がメディアに出ることで、1人でも多くの方に性同一性障がいの事を知ってもらい、そういった人たちが働きやすくなる環境が増えればいいなと思っています。

それに性同一性障がいである事は人に迷惑をかけているわけではないし、ハンデではなく唯一無二の武器にもなりえる事を知ってもらいたいと思っています。僕の体験談で人の役に立つのであれば、喜んで講演会などに参加したいですね。1つだけ今言えることは、親孝行だと思って我慢して着た成人式の振袖は、カミングアウトした後に「早く言ってよ!レンタル代高かったんだから(笑)」と親に言われるので、言うなら早めの方がいいよ、ですかね(笑)

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